Saturday, May 31, 2014

アメリカと日本:両者は自由と責任に対する考え方が真反対の国ですね

昨年10月にこちらに赴任してきて、私の身近な人計3人が解雇されたことを契機に働き方について常にモヤモヤと考えてきました。折しも残業規制撤廃や解雇規制撤廃やら議論されている日本ですが、そもそもどういう社会を目指しているのか人々の間で明確にビジョンが共有されているわけではないように思います。

ということで、日本とは極端な方向に各種労働関係の規制が撤廃されているアメリカの事例を紹介して、向かう先はどのような社会なのか紹介しようと思います。

まず僕の身近な話から。最近解雇された元同僚3人は言動やパフォーマンスに問題ありで会社から解雇されました。
  • 1人(女性)は言動に問題があったとのことで即刻解雇。真相は不明ですが、もしかするとかっとして差別的な発言をしてしまったのかもしれないとのこと。
  • 残り2人は開発者としてのパフォーマンスが認められず、雇用後数ヶ月で解雇されました。

この厳しさを考える上では、アメリカ社会の自由と責任の考え方を理解する必要が有るかと思います。

アメリカ企業での働き方を見ていると、皆さんは一定の責任範囲で仕事を任されており、かなり裁量の大きい働き方をしているように見受けられます。

  • 完全に裁量労働です。
    • 残業の概念はありません。いつどのように働くのかは本人の自由です。午前中の遅い時間に出社する人もいるし、昼3時くらいに退社する人もいます。
    • ただし、別の大陸の人とやり取りするために早朝・深夜・あるいは週末働く人もいますけど。
  • 担当者に仕事遂行に必要な責務が委譲されていて、基本的にはあらゆることを担当者が自分で決めます。
    • 日本の場合、何かと上司や同僚と大勢の人とすり合わせをして時間をかけて合議制で決めていますよね。
    • 今の勤務先は基本的に担当者が全部決めていき、必要に応じて上司に承認を受けたり、同僚にレビューしてもらっています。
      • ただし、日本と比べて責務が委譲されているので、意味もなく関係者とすり合わせはせずに極めて少人数で物事を決めていく傾向にあります。

このようにアメリカ企業では各人が日本と比べて羨ましいほど裁量が大きいです。しかし、自由と責務はコインの裏表の関係にあり、受け持った責務を遂行できているのかは常に厳しくパフォーマンスの評価を受けます。
  • 責務と担当者の関係が明確です
    • 必ず案件と担当者の関係は1対1で紐付けられ、誰の責任か明確に決められてしまいます。つまり、何か問題があると担当者の評価が下がりますし、良い業績だとその人の評価はうなぎのぼりです。
  • 定量的、定性的な360度評価をやります
    • 今の勤務先はBI(ビジネスインテリジェンス)の会社だけあって、バグ管理DBからデータを引っ張ってきて、誰がどのくらいの優先度の仕事を、どれだけこなしているのかモニタリングしています。たまに定量的な業績ランキングが社内に流れたりします。
    • 一方で、評価の際には、上司だけでなく担当者の仕事ぶりをよく知っている同僚からも仕事ぶりを評価を受けます。例えば、今回解雇された人は不具合を多発させている開発者で、QAやカスタマーサポートの仕事を見だしたとしてたいそう評判が悪かったです。

のように責任を明確にされ、厳しくパフォーマンスが評価されます。
これは今の勤務先がことさら厳しいわけではなく、パフォーマンスあるいは経営方針が変わり予算縮小などを理由に解雇されることはよくある話です。実際、スタートアップでデザイナをしている友人は、勤務先にはそれほどデザイナの仕事があるわけではないから、いつ解雇されるか不安だと漏らしていました。解雇されても大丈夫なようにするためなのか、プログラミングのコースを受講し、単純なモックだけじゃなくてちゃんとしたプロトタイピングができるようなスキルを習得しているようです。

こうして、裁量は大きく、評価は厳しい社会で解雇はされやすいですが、自助努力を重んじる社会です。皆、生きるのに必死で、自費で有料のトレーニングを受講するなどして自分のスキルセットを充実させたり、あるいはネットワーキングの機会を設けて今後のトレンドを理解して、次の5年や10年に備えようとしています。

厳しいですが、自発的に、かつ前向きに、時代に合わせて自分を変えていこうとする意思を持つ人が多くいます。こういう社会なので、しょうがないとあっけらかんとしています。個人がどうしたって社会が変わるはずがないんだから。

日本の政府が言っている、成果に基づいた評価を行う社会とやらについて突き詰めた結果、日本の反対側にいる社会のありようはこのようなものです。一方で、日本の状況はどうでしょうか?日本は裁量が小さい代わりに責任を曖昧にする傾向にあり、解雇されるまで責任を問い詰められることは少ないですよね。

私は日本の今の雇用環境もうまくいっているとは思えませんし。特に解雇規制が日本の流動性を奪っているように思ってすらいます。各種規制の撤廃とうまくそれが機能する社会に移行するべきだとは思っています。しかし、日本がアメリカほど極端な状況に進むとは到底思えません。さーて、どうしたらいいもんか。皆さんはどう思いますか?

No comments:

Post a Comment